作曲家、筒美京平の作品には好きなものが多すぎて、どれか好きなものを10曲あげろ、と言われたら、選別だけで三日三晩悩んだ挙句に熱を出して寝込んでしまい、結局選別できずに白旗をあげてしまうだろうと思う。
曲調も多種多様で、どの曲にも違った良さがあり、聴くたびに発見がある。一人の作曲家の作品の中にいくつものジャンル分けができてしまう。そんな偉大な作家、筒美京平作品の、今回はソウルフルな傾向の曲、を選んでみた。
では、好きで好きでたまらない、この曲から。
72年のマチャアキの「サウンド・ナウ!!」というソロ・アルバムに収録の、「ベイビー,勇気をだして」という、モータウン+歌謡曲な一曲。
堺正章のシンガーとしての実力も素晴らしいし、ヘイヘイヘイ!の女声コーラスの合いの手がとても黒いフィーリング。演奏もグルーヴィーで言うことなしのハッチャキマチャアキ。このアルバムは全てのナンバーを筒美京平が作・編曲、という豪華な盤であり、全曲素晴らしい。
お次、平山三紀。シルキーなソウル歌謡、「愛の戯れ」。
作詞家、橋本淳と筒美京平のコンビに愛されたシンガー、平山三紀。この組み合わせでのヒット曲といえば、「真夏の出来事」であり、オールディーズの香りのする名曲である。
そちらも大好きなのだけど、1974年の「熟れた果実」、1975年の「愛の戯れ」とリリースしたシングルがミディアム・テンポのバリー・ホワイト風サウンドで、この路線が二枚だけ、つうのがなんとも残念なのだが、時代の先を行く筒美京平の寵愛を受けた彼女、次のシングルは「真夜中のエンジェル・ベイビー」というクールなロックナンバーで、そっちはそっちで素ン晴らしい曲なので、んもう、筒美先生ったら天才…!というなんとも複雑な気持ちに。
お次。ブラック・ビューティー・ストーンズ(BBS)。私にとってのストーンズはこの女性3人組。メンバーは、ケリー宇佐美、キャサリン中根、倉持ゆり。赤坂ムゲンや米軍基地でパフォーマンスをしていた。
ハニー・コーンのような黒くうねるグルーヴが腰をくすぐる、ソウル歌謡の傑作。こんなに黒い歌謡曲があって良いのだろうか。ソウルも歌謡も味わえる歌が。
裏ジャケには、TVにでて日本の人に笑われやしないか不安、というメンバーのコメントがある。差別や偏見に怯えながらのデビューだったのだろうと思われ、いたたまれない気持ちになる。
ちなみに、この曲はのちにアイドルグループのポピーズがカバーする。そちらもグルーヴィー。
お次、道産子シンガー、三浜鉄平のデビュー曲。作詞は有馬三恵子。
これはシュープリームスのキープ・ミー・ハンギング・オンだ。声は布施明にそっくり。せわしないワウギターと間奏でちょっとテクるベースギター、分厚いブラス。たまんない。血がたぎる。
次は、いろんな意味でブラック、松崎しげる。「銀河特急」。
1978年リリース。世はディスコ・ブーム。フィリーサウンドを完璧にものにした筒美京平にとって、ディスコ・ミュージックの歌謡化など容易いことだったかもしれない。きらびやかなストリングス、本場さながらの女声コーラス、ハイハットが景気良く開閉する16ビートの特急列車。
私が聴いたことのある筒美京平作品は、まだディスコグラフィーの半分にも満たないだろう。果たして、私は生きている間に3千を超えるという筒美京平作品を全て聴くことはできるのだろうか。
明日わけのわからん肺炎でやられてしまうかもしれない、という恐怖と戦いながら、筒美作品を掘るべくレコード屋へ通う。まだまだ黒い筒美京平作品が眠っているかもしれないし。
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