私の青春時代ははちみつぱいやムーンライダースに支えられていた。
はちみつぱいの「センチメンタル通り」は100億回くらい聴いただろう。「塀の上で」「センチメンタル通り」「薬屋さん」「酔いどれダンスミュージック」…。字面を見るだけでもきゅんとくる。
鈴木慶一とムーンライダースのアルバム、「火の玉ボーイ」も100兆回くらい聴いたかもしれない。「あの娘のラブレター」「スカンピン」「午後のレディ」「ラム亭のママ」「髭と口紅とバルコニー」…。思い出すだけで胸が高鳴る。なんてスウィートな音楽。
火の玉ボーイ~40周年記念デラックス・エディション【2CD初回限定盤(三方背BOX仕様+メモリアル・ブックレット)】
- アーティスト:鈴木慶一とムーンライダース
- 発売日: 2016/12/07
- メディア: CD
ムーンライダーズのファーストアルバムは、CDが回転しすぎて時空が歪むくらい聴いたかもしれない。なんだか知らない異国にいるみたいな気分にさせてくれるアルバムだ。「紅の翼」「独逸兵のように」「湊町レヴュー」「砂丘」…。こんなすごいアルバムを作ってくれて、感謝しかない。
ムーンライダーズがニュー・ウェイブ期に移行してからの作品はなんだかピンと来なくて、あまり聴いてない。でも、将来好きになる瞬間が訪れるのではないか、と思っている。音楽の聴き方や好みは変容していくものだし、いつか周波数が合う日が来るだろう。その日が楽しみだ。
はちみつぱいやムーンライダースの中心にいるのが鈴木慶一だ。新しく発行されるお札の肖像画、渋沢栄一にそっくりなところでも近頃話題になった。
私がはちみつぱいやムーンライダースの音楽と出会って何千回、何万回も繰り返し聴く前から、鈴木慶一は私の知らないところですでに私をノックアウトさせていた。
中学生の時にお年玉で買ったファミコン・ソフトの「MOTHER」だ。中古で3000円くらいだったと思う。その頃は鈴木慶一の名前なんて知らないし、糸井重里だって分からない、片田舎の少年だった。
RPGをするのはほとんど初めての経験だったが、アメリカの架空の街を舞台にした設定や、ポップなグラフィック、ユーモアが所々に挟まれているところとか、もうツボにはまってしまい、最後までクリアした時にはほろっと涙したものだ。あんなゲーム体験は二度とできないだろう。
その涙腺を大きく揺さぶったのが、「エイト・メロディーズ」という仕掛け。主人公の少年が世界に散らばった八つのメロディーのかけらを集めるのが物語の軸になっているのだが、八つが組み合わさって一つになった時、その美しくて懐かしいメロディーが中学生の私をいたく感動させた。あれは本当に良いメロディーだったんだよ。
作・編曲は鈴木慶一と任天堂の田中宏和の共同クレジット。今聞いても泣きそうになるし、あの時地球を救った感触が今でも蘇る。
「MOTHER」は全曲いいけど、工場の中の音楽とか好きだったなあ。スチーム感と近未来感があって。
ムーンライダーズはアイドルとも縁が深く、アグネス・チャンやキャンディーズのバックバンドをやったりしている。
アグネス・チャンの「ファミリー・コンサート」というアルバムで、ムーンライダースのバック演奏が聴ける。
レット・ミー・ビー・ゼア(LIVE)/ アグネス・チャン(Agnes Chan/陳美齡)
もともとアメリカ志向のバンドだったから、カントリー調の曲などはお手の物。
安田成美の1stアルバムは高橋幸宏プロデュースで、細野晴臣らも参加し、YMO色の強いテクノ路線の素晴らしいアルバム。
この中に鈴木慶一が提供した「Sueはおちゃめなパン屋さん」というなんだかいい曲が入っていて、これも私のお気に入りだ。
「風の谷のナウシカ」を歌った安田成美だから、パン屋の女の子が歌われているということもあり、なんとなく「魔女の宅急便」を思い出させる歌詞世界。
舌ったらずで不安定な安田成美の歌声もプリティーで非常に良い。胸キュンだ。
渡辺美奈代への提供曲も。おニャン子クラブ解散後。
これ、歌うの難しそうだが、ポップで良い曲。フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドの影響下で作った曲。大瀧詠一といい、ミュージシャンは一度はウォール・オブ・サウンドに挑みたくなるものなのだろう。
ああ、またはちみつ漬けになりたくなってきたよ。100億1回目を聴こうかな。
では最後に、宮崎美子の着替えシーンで一大センセーションを巻き起こしたこのCMを。後ろで流れているのは鈴木慶一が作曲した斉藤哲夫「いまのきみはピカピカに光って」。
1980-1990 宮崎美子CM集 with Soikll5