グループサウンズブームが衰退していく1969年夏、管楽器を導入して活路を見出そうとした、いわゆる「遅れてきたGS」バンドの一つ、シルクロード。”GSからBS(ブラス・サウンド)へ”というキャッチフレーズで売り出された。
日本でのブラス・ロックの走りともいうべき存在だが、シカゴやブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ、チェイスなどのブラス・ロックの雄たちのようなサウンドを想像するとシルクロードはまた随分趣が異なる。
やはりそこはグループサウンズなのである。
歌謡曲とロックが融合し、サイケデリック、フォークロック、R&B、ゴーゴー、ラテン、ムードコーラス、少女漫画的世界観、ハレンチ、コミックソング、ベンチャーズ、ビートルズ…いろんな要素が混在する百花繚乱のグループサウンズは本当に面白いし、国産のロックを生み出すための様々な試行錯誤が観察できる。
シルクロードのデビュー・シングルのジャケットには「ニュー・サウンド”シンギング・ブラス”の騎士、シルクロード登場!!」という謳い文句が書かれているが、ニュー、というほどの事はなく、言ってしまえばブラスの効いた歌謡曲である。
だが、このバンド、演奏力が非常に高く、グルーヴがすごいのである。ドラムのおかずがスウィンギーで、思わず腰が動くくらいノリが良い。
このデビュー・シングルはAB両面とも非常に優れた歌謡ブラス・ロックである。
両面とも日本のグルーヴ・マスター川口真編曲となっているから、ひょっとしたら演奏指導があったのかな?などと夢想してみる。
シルクロードは演奏力の高さという強みがあったからかもしれないが、グループサウンズのブームが去った後も編成を変えながら、営業バンドとして活動を続けていった。
レコードも出している。
1976年リリースのシングル。女性ボーカルが加わっている。営業バンドとしては、やはりシンガーが女性の方がウケが良かったのか。ポール・モーリアの「オリーブの首飾り」(マジックの時によくかかる曲)みたいなディスコティーク・サウンドである。
やはり演奏は上手い。ディスコ・サウンドなのでしょうがないが、あの腰を突くグルーヴは影をひそめてしまっているのが残念。DJユースは全然いける。
営業バンドの実態がどんなものなのか分からないが、繁華街のグランド・キャバレーみたいなところで演奏していたのだろうか。こんなバンドが出てたら週8で通ってしまいそうだ。昭和への憧れがますます募る。昭和生まれだけど。