映画「ジュディ 虹の彼方に」が3月6日より全国の映画館で公開される。
日本では、「オズの魔法使い」のドロシー役、ということで知名度が高い彼女だが、彼女は世界最高峰レベルでのエンターティナーであり、シンガーであり、コメディアンであり、アクトレスであり、その才能の豊かさは日本でもっと知られていいと思う。
「ホワイト・クリスマス」で知られるアメリカの国民的エンターティナー、ビング・クロスビーは彼女を評してこう言った。
ジュディ・ガーランドほど才能豊かな女性は私の知る限り二人といない。彼女は、実に偉大な女優であり、私が知っているどの女性よりも多芸多才だった。彼女は演じ、歌い、踊り、人を笑わせた。掛け替えのない人だった。私は彼女をこよなく愛していた。それが何たる悲劇か。オーバーワーク、過重なプレッシャー、男運の悪さ。*1
映画「ジュディ 虹の彼方に」では、ジュディの最晩年が描かれているとのことであるが、彼女の全盛期、どのような活躍をしていたのか出演作のMGMミュージカル映画の動画で振り返ってみたい。
トロリー・ソング(若草の頃)
なにはともあれ、まずは映画「若草の頃」のこのジュディ・ガーランドを観ていただきたい。恋する乙女の胸の高鳴り、高揚、たじろぎ、ジュディのくるくる変わる表情が観るものを惹き付ける。
MEET ME IN ST. LOUIS ('44): "The Trolley Song"
1900年代アメリカの中流家庭のホーム・ドラマといった趣の映画であるが、ジュディ・ガーランドが着るアーリー・アメリカンな衣装がマッチしていて可愛いし、目がくらむほど色彩が飛び込んでくるので、観ていて実に刺激を受ける。曲は生涯聞き続けられるくらいの素晴らしい完成度。いつ聞いても気持ちがハイになる。
ゲット・ハッピー(サマー・ストック)
Get Happy HD Clip - Summer Stock
ジュディのMGM最後の作品となった映画「サマー・ストック」。キレッキレのダンスと伸びやかな歌…画面にははつらつとしたジュディ・ガーランドの姿が映っているが、ひどい減量や薬漬けで半分死んだような状態での撮影だった。
監督のチャールズ・ウォルターズはこう述べている。
ジーンが彼女の左腕をとって私が右腕をとる。我々は彼女が立っていられるように、両脇から支えていなければならなかった。(中略)背景を釘で固定しなければならないこともあった。そうすれば、それが支えになって彼女は倒れなくてすむだろうとね。*2
スポットライトの当たるきらびやかな彼女の笑顔、後ろに落とす影はどこまでも伸びていって果てしない。泣けてきそうだ。次。
アイ・ラブ・ア・ピアノ メドレー(イースター・パレード)
Fred Astaire Judy Garland Melody I Love A Piano Snookey Ookums and The Ragtime Violin
超一流のボードビリアンぶりをこれでもかと見せつけてくれる。相手役はスーパースターのフレッド・アステア(このとき48才)だが、一歩も引けを取らない。
この映画が初共演で、二人はウマがあったらしく、冗談をかわしたり思い出話をしたりしてお互いに刺激し合った。アステアは「私のキャリアで最高に楽しいものになった」と語っている。
「イースター・パレード」は本当に良くできたミュージカル・コメディで、立川談志がこよなく愛する映画でもある。私も映画全ての中で一番好きかもしれない。
おまけ アメリカーナ/アメリカーナの少女
「オーケストラの少女」で有名なディアナ・ダービンと共演した短編映画。
友達の二人は、人気のないバンドを盛り上げようと、街中に無料コンサートがあることを触れ回る。結局思う様に客は集まらず、彼女たちがステージに上がり、ジュディがジャズを、ディアナがクラッシックを歌うと次第に客が集まり、大喝采となる、というストーリー。
ジュディが「オズの魔法使い」に出演する前の短編映画であるが、顔立ちや体型がふっくらしていることが見て取れる。
MGMは彼女に過酷なダイエットを課し、それに応えるためにジュディはアンフェタミン(覚せい剤)入りのダイエット薬を飲み出し、そのせいでハイになって眠れないことで催眠剤を飲み出す。
このときジュディ・ガーランドなんと14才。
皮肉なことだが、ジュディの過酷な私生活の詳細を知るごとに、スクリーンでの彼女はさらに輝きをましていく。エンタテインメントに人生のすべてを捧げ、身を滅ぼした彼女。
映画「ジュディ 虹の彼方に」3月8日公開!楽しみだ!
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