プロコル・ハルムというイギリスのバンドが1967年にリリースした「青い影」は全世界でヒットした。もちろん日本でも売れて、影響を受けたと語るミュージシャンも少なくない。
プロコル・ハルム、不思議な響きの名前だが、これはラテン語で「Beyond these things」という意味、とWikipediaに書いてあったが、その英訳は何なのさ。これらを超える?意味がわからない。一時期の企業のキャッチフレーズみたいなもんかな。「for beautiful human life」とか、「inspire the next」みたいな。
「青い影」は、オルガンを前に出したクラシカルなサウンドに、ブルース・フィーリングのあるボーカルが乗る、誰もが一度は耳にしたことのあるメロディだろう。
大バッハの「G線上のアリア」が元ネタの、霧雨の中にいるみたいな音像のイントロは感情に訴える力がある。ベース音が半音もしくは全音下がっていくクリシェ進行が特徴的だが、この音が下がり続ける、ということが感情に絡んでくるんだろうなあ。
というわけで、「青い影」に影響を受けたと思われる日本の歌を3つ、ご紹介。年代順に行こう。
福岡出身のグループ・サウンズ、ザ・ハプニングス・フォー。横尾忠則のジャケットがイカす「あなたが欲しい」というナンバーはモロに「青い影」の影響を感じられる。
クニ河内による眩しいばかりのオルガン・サウンド、チト河内の押し寄せる波のようなタムも素晴らしい。青い影と同じ年のリリースだから、相当反応が早い。
ザ・ハプニングス・フォーはGSの中でもかなり特異な存在。もともとラテンを得意とするバンドで、この「あなたが欲しい」のB面、「何故?」はラテン歌謡の傑作だし、ブガルーの曲もある。後期はプログレなアルバムも出しているし、通好みなGSである。
オルガンのクニ河内が「ピカピカの一年生」の作曲者だと知った時には、へー!と驚いた。
お次。荒井由実。
ユーミンは、プロコル・ハルムから影響を受けた、と公に語っており、2012年発売のベスト盤「日本の恋と、ユーミンと」にはなんとご本家プロコル・ハルムと一緒にアビー・ロード・スタジオで「青い影」を歌ったバージョンが収録された。
ユーミンはこの「青い影」を聴いて、シンガー・ソング・ライターとして生きることを決めた、と言うし、山下達郎もラジオで流れた後レコードを買って100回くらい聞き続けた、というから、かなり日本の一流ミュージシャンをインスパイアした曲だということが分かる。まさに「inspire the next」。
宮崎駿映画の主題歌にもなった、ユーミンのデビュー曲、「ひこうき雲」。これも「青い影」の濃い影響を感じる曲だ。
ユーミンはプロコル・ハルムの「ドゥーミー(薄暗い)」な雰囲気が気に入ったと語っているが、この「ひこうき雲」はタイトルのせいかもしれないけど、音がカラッとしているので、「青い影」とはまた味わいが違う。
しかしこの「ひこうき雲」が収録された1stアルバム「ひこうき雲」は、確かに全体的に「ドゥーミー」である。それと同時にポップでもある不思議。もう何年も聞き続けているが、一向に飽きる気配がない。このアルバムと出会って良かった。
最後、西城秀樹。26枚目のシングルで、「ブルー・スカイ・ブルー」。作詞は阿久悠、作・編曲は馬飼野康二。サビが「青い影」である。
泣ける。
この「青い影」の進行は感動的な演出をすることができて、涙腺にアプローチしやすいので、特にバラード曲に用いられる。ヒデキのパワフルな歌唱が涙袋をぐいぐい押してくる。この曲でヒデキはアイドルから本格派のシンガーとしてイメチェンする。
しかし夜ヒットはスモーク焚きすぎじゃないのか。
というわけで、プロコル・ハルムの「青い影」に影響を受けた歌、3つをお届けした。以上。