歌謡曲でも演歌でも、曲を聴いていて、これ誰が演奏しているのだろう?などと考えることは多い。
特に昔の歌謡曲はレコードに演奏者のクレジットが表記されていないことも多く、手ぐせや音の特色、数少ない証言から(演奏した本人も覚えていないことが多い)、少しずつ明らかになってきたりしている。
ベーシスト江藤勲と寺川正興のどっちが弾いているかなんて論争の種になったりするくらいで。2人とも60年代〜70年代の歌謡曲を支えたベースの巨人であるが、グルーヴがノってきた時に上へ下へ動きまくって手数が多くなる(しかも複雑な譜割で!)が特徴で、世界的に見ても稀有なプレイをするベーシストなのである。
いつか2人のプレイを分析した教則本が出ないかな、と密かに思っているのだが、出ないよな。余程リズム感がないと火傷しちゃう弾き方ではある。
さて、今日気になったのは、ユーミンの「やさしさに包まれたなら」のイントロの印象的なアコースティックギターを誰が弾いているのか、ということ。
このギターのイントロだけで、すでにやさしさに包まれちゃう。荒井由実に弁財天が憑依したのでは?というくらい神がかったソングライティングや歌詞、歌も演奏も何もかも完璧な曲。この曲に何度ウキウキさせられたことか。
初期ユーミンのことなので、演奏は全部キャラメル・ママが手がけているのかと思っていた、つまり鈴木茂がアコギを弾いているのかな?と思っていたが、最初のアコギは吉川忠英が弾いている、とのこと。
吉川忠英というスタジオ・ミュージシャンは、アコースティックギターの名手として、数々の名曲の録音に参加している。
例えば、
くっきりと粒立ちの良いアコースティックギターのアルペジオが、出しゃばらず、でも印象的に、ものすごくスマートなプレイをしている。プロだなあ。
これも。
バックの演奏はシンプルなのでアコギのストロークが目立つ。しゃりしゃりした音が気持ちいい。
もちろん作曲家にもよるだろうが、録音の際はスタジオミュージシャンにある程度の裁量が持たされていたみたいで(ストリングスとかブラスなどのセクションはあまり個人のセンスを出すことはないだろうから別として)、ギターやベース、ドラムスや鍵盤など、気の利いたフレーズを生み出したり、強烈なグルーヴを生み出すようなセンスのある人が重宝されたようである。当たり前の話か。
まあでもセンスと腕が両方ないと生き残れない厳しい世界であったことは想像できる。
スタジオ・ミュージシャンとしてデビューしたての頃の矢島賢が、郷ひろみ「男の子女の子」の録音に参加した時、譜面には歌の合間に「好きなようにフィルを入れる」と書かれていたらしい。もちろん譜面を書いたのはかの筒美京平。
ひろみ卿が「君たち女の子♪」と歌った後にかっこいいエレキギターのフィルをインし、かくして「男の子女の子」は大ヒット。作曲家や編曲家とミュージシャン達はこうしてやり合いながら曲を磨いていった。いい時代だなあ。
- 価格: 2619 円
- 楽天で詳細を見る
- 価格: 2042 円
- 楽天で詳細を見る
- 価格: 4382 円
- 楽天で詳細を見る