「私祈ってます」というムードコーラスのヒット曲がある。
敏いとうとハッピー&ブルーが最初に飛ばしたヒット曲である。
ちょっと待って………Wikipediaの敏いとうの紹介文がすごい。
青山学院大学経済学部在学中にアメリカンフットボール部を設立。日本大学農獣医学部獣医学科卒業。作曲家遠藤実の愛犬を診察したのがきっかけで芸能界に入る。1967年、“トシ伊藤とザ・プレイズメン”名義でミノルフォンレコードよりレコードデビューする。芸名の敏いとうとは、本名伊藤敏を逆さまにしたものである。大学卒業後の渡米時にフランク・シナトラのボディガード役を務めるなどのエピソードを持つ。
遠藤実の犬を獣医として診察したのがきっかけで芸能界入り?!シナトラのボディガード?!それ世界一危険な仕事ではないのか?
いやあ、とんでもない経歴だ。やっぱり昭和の芸能界は、はちゃめちゃで面白い。
本題に戻る。敏いとうとハッピー&ブルーによる「わたし祈ってます」がこちら。
いきなりサビのクライマックス「♪わたし祈ってます〜」で始まるという意表をつく構成。いやらしい歌声にいやらしいサックスの音色。昭和によく描かれた、貞淑で耐える女というイメージを具体化した歌詞、良くできた曲だ。
それにしても女心を男が集団で歌う、という歌謡形態は日本独自のものなのだろうか。ムードコーラスが生まれた経緯も気になる。ムードコーラスの原型って何なのだろう。
で、この「わたし祈ってます」にはオリジナルが存在する。敏いとうとハッピー&ブルーはカバーなのだ。
そちらがこの動画………、
と紹介する前に視聴する前の注意点というか、聞き所というかをお伝えしておく。
オリジナルは松平直樹とブルーロマンというグループの「幸せになってね」というタイトル。
最初にいかにも昭和らしい女性の音声で「あなた、幸せになってね」と収録されている。 そこはいい感じ。
そして悲しげなマンドリンの音色でイントロはつむがれていくのだが、マンドリンのソロが一段落したあたりでちょっと心構えというか、防御をしておいてほしい。
なぜなら、ここからコーラスが入るのだが、コーラスのビブラートが強すぎて脳が細かくシェイクされるようなショックを受けるからだ。
用意はよろしいか。
では、松平直樹とブルーロマンによる「幸せになってね」をどうぞ。
…なんと形容したらいいか、フリッツ・フォン・エリックから腹筋にアイアンクローされたら私もこんな声が出るかもしれない。もしくは馬場の胃袋踏みか。
地獄の底で亡者が嘆いているような味わい深いコーラスである。亡者や餓鬼の魑魅魍魎から「幸せになってね」と歌い上げられても、まず、額面通りには受け取れないだろう。
松平直樹氏はマヒナスターズで活躍し、のち独立してこのバンドを結成した由緒正しい経歴の持ち主。私が知りたいのはコーラスをつとめるブルーロマンの方なのだが、レコードには個々のメンバーのクレジットがない。あの声の持ち主が誰なのか特定したい。