外人のカタコトを笑う風潮は好きではない。
逆の立場に立ったら、私の中2レベルの英語は、ほとんど意味をなさない空虚な音でしかないだろうし、知らず知らず人を侮辱する意味の英語のTシャツだって着ている可能性だってある。
しかし、カタコトの響きには妙な味わいがあることも事実。母国語を引きずった抑揚や発声、フレーズのつなぎ方等、普段聞いている日本語と似て非なるものだから新鮮に聞こえるからかもしれない。
そういえば大相似形テレビって番組あったよね。すぐ終わった。
歌謡曲の世界にもカタコトの素敵な味わいを持つものがある。日本という島国の、習得が難しいと言われる日本語を、懸命に操ろうとしているその苦労と勇気に敬意を表しつつ、カタコト歌謡を聞いてみよう。日本語の新しい味に気付くはずだ。
作詞 ささきひろと 作曲 寺内タケシ
寺内タケシの寺内企画所属のフィリピン・バンド。グループサウンズの時代にはこういう出稼ぎバンドが20くらいあったらしい。
演奏がパワフルでかっこ良く、上手い。
Roland Menaのボーカルもダンディな声で喉も良く回っているが、ちょくちょく疎通性に乏しい日本語が出てくる。2番から英語になるので残念だが、1番だけ聞いても、その破壊力と熱気に圧倒される。
「♪ベイビー、すっきだっから〜」「♪ベイビー、わっからねえ〜」
と発音がシャッフルビートみたいにハネてるのが新味があって良い。べらんめえ口調も◎。
サビの盛り上がるところでかなり日本語が崩壊している。
「だけどうぃつか〜
街の角で
お湯かけた
誰のあとを
美味しそうに
どぅいきったのさ〜〜〜♪」
意味が分かりそうでギリ分からないのが、とてもいいラインだと思う。
曲の熱気ある盛り上がりとともに、どぅいきったのさ〜、と力を込めて歌われたら、うわあ、どぅいきったのかあ、と意味も分からず感心してしまうくらいの押しの強さがある。
・夜の柳ヶ瀬/カサノヴァ7(セッテ)
カサノヴァ7、日本コロンビアのホームページにプロフィールがあったので驚いた。
columbia.jphttps://columbia.jp/artist-info/casanovasette/prof.html
イタリア人男性5人と日本人女性2人の7人組グループ、カサノヴァ7(セッテ)。バックコーラスとそのソフトな演奏が、イタリアの雰囲気を醸し出すポップな演歌調歌謡曲。編曲のブルーノ・ダラポッサは、ヒデとロザンナのロザンナ・ザンボンの叔父。メンバーのなかにロザンナの兄のフラビアーノ・ザンボンも在籍していたらしい。二人の女性のうち、ひとりは若き日のキャシー中島。ただしレコーディングには参加していなかったよう。
全員イタリア人だと思い込んでいたので、まさかキャシー中島がメンバーにいるとは知らなかった。
元々は赤坂の「月世界」という洒落た名前のナイトクラブに出演していたカンツォーネバンド。
この「夜の柳ヶ瀬」、結構レコード屋さんで見つかる。オリコン25位までいったロングセラーで、内容がものすごく良い。
演奏はおしゃれで、確かにイタリアの香りがする。ヴォーカルがいい喉をしていて、良くコブシの回る声で景気のいいカタコト演歌を聞かせてくれる。
どうだろうか。いい味わいだ。ダバダバコーラスの間奏のあと、グルーヴが加速していき、ボーカルも絶頂を迎える。
不思議な異文化交流。明太子と海苔とバターとパスタが出会った奇跡。私はこの曲を20年以上愛している。
・スコーピオンズ/Kojo- No-Tsuki
ドイツ産ハードロック/ヘヴィメタルバンドのスコーピオンズによる、滝廉太郎「荒城の月」のカバー。「荒城の月」が元々備え持つ叙情性と、ジャーマンメタルとの相性は抜群。ヴォーカルのクライス・マイネの歌はカタコトというか、ほぼ完璧な発音で、そうとう歌い込んだのではないかと思われる。
Scorpions [ Kojo-No-Tsuki ] スコーピオンズ「荒城の月」1978
ワンコーラス終え、オーディエンスに歌わせ(歌詞うろ覚えな観客)た後に地を這うようなヘヴィなギターがからむのが面白い。ギターはウリ・ジョン・ロート。
ちなみにアメリカのジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクもこの曲を取り上げている。映画「ラ・ラ・ランド」でも使われたとか。観てないけど。
Thelonious Monk's Bootleg Series1966a :Japanese Folk Song
これ、最初サックスのチューニングがめためたなんだけど(だんだん合ってくる)、酔っぱらってたのか何かのお薬の作用なのか。。。
荒城の月は世界的に知られた歌なのか、Wikipediaには記述がなかったので、いつか文献を当たって調べるとしよう。
・エボニー・ウェブ/ディスコお富さん
70年代末に日本のディスコで活躍していた黒人グループエボニー・ウェブによる、春日八郎「お富さん」のノリノリカバー。とても完成度の高いカバーで、ディスコマナーに則った「ハッ」の掛け声も気持ちよく、実に踊れる一品。
Disco お富さん ・ DISCO OTOMISAN / EBONEE WEBB
それにしても、先述のクラックナッツもそうだが、外人さんがべらんめえ口調を使うと妙な魅力がある。
春日八郎「お富さん」は歌舞伎の文句を歌にしており、意味というよりはその語感やリズムを楽しむ歌だ(当時、子供に大受けしたらしい)。だから外人さんが歌ってもそれほど違和感がないのでは。
外人の口から発せられる特別な抑揚の日本語が、カタコトでコブシがぐるんぐるん回った日本語がいかに魅力的か伝わっただろうか。また思い出したり見つけたりしたら更新していく予定。
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