石川秀美はシブがき隊のヤックンとの結婚を機に引退した歌手、もしくは花の82年組として記憶されている方も多いと思う。
私もその印象しかなくて、後になって昭和歌謡が好きになり、レコードを掘りはじめてから彼女のことを調べたりした。
お茶の間レベルまで浸透した大ヒット曲は残念ながらないが、「ゆ・れ・て湘南」など佳曲も多いし、今回とりあげる「Sea Loves You」も、爽やかな夏ナンバーである。
繰り返すが、私は後追い世代なので、当時の人気がどれほどのものか、文献や映像から想像するしかないのだが、映像を見ると
か、可愛い………!
そしてシャービック美味しそう…!
これは人気が出る。
Wikipediaには苦しそうに一生懸命歌うのが魅力、との記述があったけど、
この映像を見る限りでは、楽々高音も出てるし、楽しそうに歌ってて、そして、
か、可愛い…!
作曲の小田裕一郎は、まあなんといっても松田聖子「裸足の季節」「青い珊瑚礁」「風は秋色」を作っていて、サマーブリージンな名曲が多い。「Sea Loves You」も潮の香りが心地よく吹き抜ける良曲だ。
ジャケットを確認すると、<海の日>イメージソング、とある。海の日って、最近制定された祝日ではないのか?
と思ったら、平成7年制定…。最近って。
いや、それでもおかしいな。「Sea Loves You」は昭和60年リリースなので。これは謎。
作詞家の売野雅勇は、中森明菜「1/2の神話」「少女A」など、ショッキングでスキャンダラスな作品が代表作であるが、それで納得がいった。
一聴してさわやかな海ソングなのだが、歌詞の内容は
年上の女性の魅力をフルコンボで年下の男の子にぶつけまくる。暴力的なほどだ。
「キッスで殺して」
「好きなのと言わせてごらん」
「年下でしょ 無理しないで 言うこときくのよ」
などと、ちょっとぐいぐいがすぎるのでは。
あげく、
「可愛いわ Sweet cherry boy」
とのたまう。
言うこときけと恫喝したり、チェリーとさげずんだり、ラジバンダリ、
SM的な性倒錯の世界観なのであろうか。
さっきあげた夜ヒットのyoutubeには残念ながらはいっていないが、レコード音源では曲のアウトロで、秀美と女性コーラスで一緒になって「チェリーボーイ♪チェリーボーイ♪」と歌われるのである。
女性が集団で、年幾ばくもない男の子に向かって「チェリー」を連呼するのを想像して、
さらに深くて複雑な性倒錯の世界観かもしれない、と思ったのであった。